農家が愛した夏の恵み「セゾン」―フルーティでスパイシーな爽快ビールの魅力とは?

ビールの世界には、スタウトやIPA、ヴァイツェンといった個性的なスタイルが数多く存在しますが、今回はその中でも独特な背景と味わいを持つ「セゾン」についてご紹介します。

 

1.セゾンとは?どんなビール?
「セゾン(Saison)」は、ベルギー南部のワロン地方発祥のビアスタイルで、もともとは農作業を終えた夏に楽しむために、冬の間に仕込まれた「季節労働者(セゾニエ)」向けのビールでした。フランス語で「季節」を意味する“セゾン”の名の通り、夏に飲むための爽やかなテーブルビールとして生まれました。

 

現代では、セゾン酵母が生み出すスパイシーな香りとドライな飲み口、フルーティな余韻が魅力で、クラフトビールファンからも根強い人気を誇るスタイルです。

 

2.誕生の歴史:農民の知恵から生まれたビール
18世紀~19世紀のベルギーでは、農家が夏の労働者に提供するために、自家醸造で保存性の高いビールを冬に仕込んでいました。暑い時期に大量の労働をこなす労働者にとって、清涼感のあるビールは栄養と水分補給の両方を担う存在だったのです。

 

当時のセゾンは、ホップの防腐効果やアルコール度数を高めて長期保存が可能なように設計されており、その土地ごとの農作物や酵母が風味に大きな個性をもたらしていました。

 

3.代表的な銘柄:セゾンの王道から日本クラフトまで
セゾンスタイルの代表的なビールは以下の通りです:

 

(1)デュポン醸造所「セゾン・デュポン」(Saison Dupont)【ベルギー】
セゾンスタイルの金字塔とも言える1本。柑橘系とスパイスの香り、ドライな余韻、そしてキリっとした苦味が特徴。クラフトビール愛好家に「セゾンと言えばコレ」と言わしめる名品。

 

(2) ヤッホーブルーイング「僕ビール君ビール」
可愛らしいパッケージと軽やかでフルーティな味わいが特徴で、飲む人に驚きと笑顔を届けてくれる1本です。

 

 

(3)志賀高原ビール「Miyama Blonde」
セゾン酵母を使用したブロンドエール。米を使った和のアレンジが光り、すっきりとした飲み口と繊細な香りが特徴的な一本です。

 

4.外観:淡いゴールド〜オレンジ色、泡立ちは豊か
セゾンの見た目は明るいゴールドからオレンジがかったアンバー色まで幅広く、自然酵母の働きでやや濁ったものもあります。泡立ちは非常に良く、繊細でクリーミーな泡が持続するのも特徴です。

 

5.香りと味わい:スパイスと果実の競演
セゾン酵母が生み出す香りは、白胡椒やクローブ、コリアンダーのようなスパイス感と、バナナや洋ナシ、柑橘系のフルーティな香りが入り混じります。

 

味わいはドライでキレが良く、やや酸味を感じるものも。アルコール度数は5〜7%程度とやや高めですが、軽やかな口当たりでスイスイと飲めてしまう危険な(?)ビールです。

 

6.おすすめの飲み方:よく冷やしてグラスで
セゾンは6〜10℃前後に冷やして飲むのがおすすめ。香りをしっかり楽しむために、ワイングラス型やチューリップ型のグラスでゆっくり注ぎましょう。

 

また、発泡が強いので、勢いよく注ぐと泡だらけになります。2〜3回に分けてゆっくり注ぐのがポイントです。

 

7.おすすめしたい人:こんな方に飲んでほしい!
クラフトビール初心者で、軽やかなビールを探している方

 

IPAの苦味が苦手だけど香り高いビールを楽しみたい方

 

ワインやシードルのような果実香を楽しみたい方

 

暑い夏に爽やかなビールを探している方

 

セゾンは派手すぎず地味すぎず、飲みやすさと奥深さのバランスが絶妙です。

 

8.まとめ:セゾンは“季節”を楽しむビール
セゾンは、その名の通り「季節」を味わうビール。特に暑い夏にはぴったりのスタイルでありながら、香りと味わいの複雑さから、春や秋にゆったり楽しむのにも最適です。

 

まだセゾンを試したことがない方は、ぜひ代表的な1本からスタートしてみてください。クラフトビールの新たな魅力に出会えるはずです!

 

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