エールビールはどんなビール

日本で流通している多くのビールは「ラガー」ですが、世界にはもうひとつのビールの王道、「エールビール（Ale Beer）」があります。実はこのエールビールこそが、ビールのルーツであり、クラフトビール人気の原点でもあるのです。

この記事では、エールビールの基本情報からラガービールとの違い、味わいや香りの特徴、代表的なスタイルや国別の紹介まで、ビール初心者にもわかりやすく解説していきます。

1.エールビールとは？｜上面発酵で造られる香り高いビール
エールビールは、エール酵母（上面発酵酵母）を使って常温に近い温度で発酵させるビールです。発酵温度は15〜25℃程度と高く、酵母がビールの表面で発酵することから「上面発酵ビール」とも呼ばれます。

この発酵方法により、ビールにはバナナやリンゴ、オレンジのようなフルーティな香りが生まれ、モルトの甘みや複雑な味わいも感じられるのが特徴です。

2.ラガーとの違いは？｜発酵方法・香り・味わい
現在、日本の大手メーカーが製造しているほとんどのビールは「ラガービール」で、これはラガー酵母（下面発酵酵母）を使い、低温（5〜10℃）でじっくり発酵させて造られます。

比較項目	エールビール	ラガービール
発酵方法	上面発酵	下面発酵
発酵温度	15〜25℃	5〜10℃
香り	フルーティ・複雑	すっきり・控えめ
味わい	濃厚・まろやか	キレ・爽快感
日本での主流度	少数派（クラフト中心）	主流（大手メーカー）

エールビールは香りや味の幅が広く、クラフトビールの多くがこのスタイルを採用しています。

3.エールビールの歴史｜ビールの起源はエールだった
ビールの歴史をさかのぼると、最古のスタイルはエールビールだと言われています。古代メソポタミア文明でも、すでにエールに近いビールが飲まれていたとされており、ヨーロッパでは中世から修道院などで発酵技術が磨かれてきました。

一方でラガービールが誕生したのは15世紀のドイツ・バイエルン地方。低温保存技術と冷蔵環境が整い始めたことで、低温発酵のビール（ラガー）が可能になり、やがて世界の主流になっていったのです。

4.エールビールの代表的スタイルと特徴
エールビールにはさまざまなスタイルがありますが、特に人気のあるものをいくつか紹介します。

▶ ペールエール（Pale Ale）
イギリス発祥で、フルーティな香りと程よい苦味が特徴。20世紀後半、クラフトビール文化の台頭と共に、アメリカではこのスタイルをベースにホップを強化した「アメリカン・ペールエール（APA）」が登場し、これが世界中のクラフトブームのきっかけの一つにもなりました。